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Synchro In City #399

[Synchro In City #399a]
SynchroInCity399a
(画像をクリックすると Flickr で縮小前の画像をごらんいただけます)
ContaxⅡ + Carl Zeiss Jena Sonnar 50/2 C, Kodak Tri-X 400 (100ft)
Scanner: CanoScan 9000F + Silverfast SE plus


コンタックスでアンダーパーフォレーションと言えば.....






コンタックスでアンダーパーフォレーションと言えば、ロバート・キャパによる D-Day(1944年6月6日 ノルマンディ上陸作戦)の写真を思い起こさずにはいられません。
でもなぜアンダーパーフォレーション、画像がパーフォレーションに掛かってしまったのか。これまで読んだ資料からは、乾燥工程で温度を上げすぎて像が浮いてずれてしまった、とあります。本当にそんなことが起きるのか、それもこの写真を見るときにいつも疑問に思っていたことでした。

余談の部類になりますが、小生、とある映画を観てから映画館で映画を見ることができなくなってしまったのです。できなくなったとは言い過ぎかもしれませんが、あの映画以降、映画館で映画を観たのは1度か2度、それも子供と一緒に観るような子供向け映画だけなのですから。そのある映画とは、1998年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画であるプライベート・ライアンです。映画冒頭から始まるノルマンディ上陸作戦を映した部分は特に衝撃的で、映画を観終わった後、あごに大きなアザができていたほど。どうやら映画を観ている最中、無意識にあごをつねっていた、若しくは握っていたようで、その結果、皮下出血ができてしまったのです。その体験が、小生から映画館での映画鑑賞から足を遠ざけているのです。
一方、カメラや写真を楽しむ中でクラシックカメラに興味を持ち、カール・ツァイスのレンズ、特にビオゴン型のレンズにひかれるようになり、中でも戦前型ビオゴンとして有名なコンタックス用 Carl Zeiss Jena Biogon 35/2.8 が使いたくなり、結果として Contax Ⅱ を手に入れるに至る過程で、コンタックス遣いのロバート・キャパを知ることになります。ロバート・キャパの名を知るとすぐに出てくるのが、この D-Day の写真。
衝撃的な映画のモチーフとロバート・キャパが撮影に臨んだ事実の2つが、当に符合して、小生の中では特別な思い入れになっているのです。
あのプライベート・ライアンの映画に出てきたような場面が現実にあったとして、いや、現実にあって、その中で写真家ロバート・キャパは目の前の光景をあのコンタックスで撮影しているのです。自伝的小説とされる「ちょっとピンぼけ(Slightly Out Of Focus)」で淡々と述べられていますが、フィルムを巻いてファインダーをのぞきこんだかはともかく、シャッターを押し、また巻き上げ....、どうやらフィルム交換もしていると記述しています。あの状況下で....、裏蓋が外れる構造、つまり、どこかに置くか抱えるかしなければならないカメラにフィルムをセットして、用心深く裏蓋を組み立てる....、そんな件は書かれてはいないものの撮影済みフィルムを巻き戻しもしたのでしょう、あの底板にあるボタンをずっと押しながら巻き上げノブを巻き上げるという時間のかかる行為も、あの状況下で....
「ちょっとピンぼけ」にはフィルム交換が上手く行かず、フィルムをだめにしたような記述もあります。そうでしょう、そうでしょう、そうなりますよね、わかるなぁ、それ....、いつもコンタックスにフィルムを装填する時、フィルムを巻き上げる時、出先でフィルムを交換する時、思い出さずにはいられないのです、ロバート・キャパがオハマ・ビーチでしてきたことを。


[Synchro In City #399b]
SynchroInCity399b
(画像をクリックすると Flickr で縮小前の画像をごらんいただけます)
ContaxⅡ + Carl Zeiss Jena Sonnar 50/2 C, Kodak Tri-X 400 (100ft)
Scanner: CanoScan 9000F + Silverfast SE plus


そこで本題に戻って、アンダーパーフォレーションです。
なぜアンダーパーフォレーションになったのか、です。

先ずは、手元にあるいくつかの資料を基に考察してみましょう。
先出の自伝的小説とされる「ちょっとピンぼけ(Slightly Out Of Focus、※1)」ではIX章に現場での状況が述べられています。「....、私の第一のコンタックスをとりだした(同書より引用、斜字体は以下同様)」と、砂浜に到達したところで「やおら第二のコンタックスを取り出すと....」とあります。ロバート・キャパは少なくとも2台のコンタックスを現場に持ち込んでいたようです。もちろん、それぞれにフィルムがあらかじめ詰められていた状態であろうことは必然でしょう。そして「....次から次にシャッターを切った。」ことから、フィルムを交換することになるものの、巻き上げとフィルム取り出しについては記載がなく、「....新しいフィルムをとりだしたが、....カメラに入れることができなかった。」とあります。このあと、「....新たな恐怖が....」という心境に陥り、沖から接近してきた赤十字船に飛び乗り現場を離脱。その船内で「....、二つのカメラにフィルムをつめ」、船内と海岸線を撮影、沈みかけた赤十字船から上陸用舟艇に移り母艦に戻り、そこで気を失うと記述されています。となると、撮影したのは少なくともフィルム4本分。その後、フィルムはロンドンに送られ現像されるも、乾燥工程で「....、過熱のためにフィルムのエマルジョン(乳剤)を溶かして」しまい、「一0六枚写した私の写真の中で救われたのは、たった八枚きりだった。」と記述されています。
次にその救われたフィルムが掲載されている「MAGNUM CONTACT SHEETS(マグナム・コンタクトシート、※2)」で該当部分を見てみましょう。そこには、注釈としてではありますが、「キャパのオリジナル108から救出された12枚のうち10枚を複製した。」、「....、生き残った9つのネガ(救われたオリジナルの2つは失われてしまった)」とあり、微妙に枚数の合計が合いませんが、9枚のネガによるコンタクトシートが掲載されています。それらは等しく画像下側(カメラでは上方に位置する)部分がパーフォレーション移りこんでいます。フィルムの各コマ右下にはコマ数が打たれていますが、これらは最初から潜像として入っていたものと推測されます。いわゆる長巻きであれば36近辺が終わりではなく、それ以降の番号が入っていても不思議ではありません。またフィルム名が判別しにくいのですが、PANCHROMATIC と言う文字と SAFETY、KODAK、SUPER、X が何とか読み取れそうです。この本の他のページを見てみると、KODAK SUPER-XX ではないかと推測されます。画像がパーフォレーションに掛かってしまった理由として、「....フィルムの表面からわずかにずれてしまうほど乳剤が溶けきってしまっていた。その結果、画面がパーフォレーション..(中略)..食い込んでしまっていた。」とあります。これが冒頭の乾燥工程で高温下に放置したため像がずれた、という説の所以です。
最後に手元にある本で D-Day 写真がある本としては、ロバート・キャパ生誕100年で発刊された「ロバート・キャパ(※3)」があります。ここにはアンダーパーフォレーションになった事象は書かれていませんが、「現在11枚のオリジナル・ネガのうち、ICPに保管されている8枚しか残っていない。消失してしまった3枚のなかには、....」と残った枚数がまた微妙に異なっている記述があります。
また、雑誌 Camera Magazine No.17 (※4) の特集記事にも登場していますが、「生き延びたフィルム」と題された部分の記述は、前出「MAGNUM CONTACT SHEETS」に沿った内容になっています。「....、乳剤面が溶け、」と。
まとめると、
・ロバート・キャパはコンタックスを使用して撮影した
・フィルムは Kodak Super-XX と推定される
・アンダーパーフォレーションになったのは現像作業の乾燥工程で高温下に放置したため乳剤が溶けて画像が移動したため
となるかと。つまり、冒頭に戻って、小生がこれまで聞き及んできた理由に他なりません。

とはいえ、実際に高温下に置くと像が動くのか....、これは実験してみないと分かりません。
しかしながら、これまでカメラとフィルムの位置関係がフィルム・カセット(フィルム・マガジン)とパトローネを用いることで違うことがあることを見てきていると、異説を持ち出したくなります。
すなわち、アンダーパーフォレーションになったのは、カメラへのフィルム装填時にズレが生じていたためではないか。それは、コダックのパトローネ入りフィルムを用いたためか、又は、コダック製のカートリッジなのかは不明ですが、コンタックス用フィルム・カセットではない容器でフィルムを装填したためではないか、と。そして、戦争のものすごい状況下での取扱いのブレも、わずかにはあったのではなかろうかと。いくらプロのカメラマンだったとしても、あの戦闘状況下で冷静にはフィルムをフィルム・レール中央部にセットされていることを慎重に行って裏蓋を閉めて撮影に臨んでいるかというと....

ここまで述べてきて、ネットで調べていたら、同じことを考えていた人がいることがいることがわかりました。きっかけはコンタクトシートから読み取ったフィルムの銘柄です。2回に分かれた投稿で、当に小生が指摘しようとしてきたことが写真入りで詳しく述べられています(ここここ)。ちなみに、同氏は残ったフィルムについての考察もされています。いずれもが2014年、ロバート・キャパ生誕100年で色々と取り上げられた翌年、に十分考察した結果として公表しているようです。小生はこの考察結果を支持します。


というわけで、これまでコンタックスを使うたびに引っかかっていた疑問、なぜロバート・キャパが D-Day で撮影した写真にアンダーパーフォレーションが起きていたのか、他者のしっかりとした考察という助けもあり、小生としてはしっくりと落ち着くことができました。

蛇足ながら付け加えさせていただくと、ロバート・キャパの写真がとても好きなのです。それは、戦闘シーンの写真ではなく街撮りや、子供を写した写真。とっても自然体の人が写っているのですよ、きっと、ロバート・キャパが自然体な人だったからなのでしょうね。
コンタックスを使う理由、ビオゴンを使いたいこともあるのですが、ロバート・キャパを敬愛しているからでもあるのですよ、実はね。

<出典リスト>
※1: ダヴィッド社、2010年1月15日 第14版
※2: 青幻舎、2011年11月1日 初版
※3: 原書房、2012年9月10日 第1刷
※4: エイ出版社、2012年5月26日刊


[Synchro In City #399c]
SynchroInCity399c
(画像をクリックすると Flickr で縮小前の画像をごらんいただけます)
ContaxⅡ + Carl Zeiss Jena Sonnar 50/2 C, Kodak Tri-X 400 (100ft)
Scanner: CanoScan 9000F + Silverfast SE plus

テーマ : ひとりごとのようなもの
ジャンル : 写真

tag : Camera.Contax2 Lens.SonnarJena50/2C Films.Kodak-TriX400 街.渋谷・原宿

コメント

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No title

どもども、Weekend Outdoors殿。

最近は欲しいカメラも無くて、レンズはあるんですが当面は手が出ないし、何しろ感材代だけで手がいっぱいです。

しかし、今から10年前には未来の感材環境は悲観的だったのですが、思ったよりは悲観的にはならなかったですね。確かに、ポジを常用していた方はかなり厳しい状況の様ですが、モノクロフィルムを使っている我々からすると、高くはなりましたが思ったよりは供給が安定的です。ただ、プレスト400の代替フィルムが無かったのが長いこと悩みだったのですが、最近はTMAX400に覚悟を決めました。もっとも、TMAX400を3本で2500円代のセラーを見つけたからなんですよね。

もっとも、印画紙は悲観的です。現在はマメに期限キレの安売りを買いためたものや頂いたもののストックがあるのですが、最近、フィルム10本程度のなからピックアップして焼いたらキャビネをあっという間に60枚くらい使いました。印画紙は本当に高くなったので困ったものです。

それで、カメラやレンズは増やす予定はないのですが、キャパというと欲しいものがあります。欲しいというか、持っていても多分使わないだとうと容易に想像ができるのですが、ニコンSですね。10年くらい前に、綺麗なニッコール5cm1.4付きニコンSが田舎の三河に5.8万円で転がっていたんですよね。しかし、失職したばかりだったので、とても手が出せなかった。とにかく、レンズが綺麗でした。

その後にSマウントやLマウントのニッコール5cmF2を何本か見ましたが、レンズの状態には満足できないですね。

なので、東京に帰った時に無理すれば買える価格帯でニコンSが転がっていたら理性を失ってしまうかもしれないです。

もっとも、実際に綺麗なゾナー5cmF2を手に入れたのにコンタックスIIも全く撮影していませんから、買って満足でも使わないでしょうなあ。

それに比べて、Weekend Outdoorsの戦闘的な意欲。
見習わなければですなあ。

Re: No title

Rikkieさん、コメントありがとうございます。

> 最近は欲しいカメラも無くて、レンズはあるんですが当面は手が出ないし、何しろ感材代だけで手がいっぱいです。

小生もあと数本と数台欲しいかなていどですかね。
最近は自分でカメラを作ってみたい、なんて思ってみたりして....

> しかし、今から10年前には未来の感材環境は悲観的だったのですが、思ったよりは悲観的にはならなかったですね。

ですね。一時期随分と買い込んでみたりしましたが、ここのところ、特にモノクロフィルムは新しいものが出てきて面白くなってきている感があるぐらいですね。

> もっとも、TMAX400を3本で2500円代のセラーを見つけたからなんですよね。

400TMY、小生の場合は、10本で約8000円ぐらいのパックを利用していました。しかしながら、お店によると、パック売りは止めるとのコト。バラになると単価は上がるんでしょうね。あるうちにもう少し長巻を買い込んでおくだったと、ちょっぴり後悔しています。

> その後にSマウントやLマウントのニッコール5cmF2を何本か見ましたが、レンズの状態には満足できないですね。

え、そうですか。というか、小生のハードルが低すぎるのかも。


> もっとも、実際に綺麗なゾナー5cmF2を手に入れたのにコンタックスIIも全く撮影していませんから、買って満足でも使わないでしょうなあ。

Contax Ⅱ、お使いになられていないようなら、適価で(ry

> それに比べて、Weekend Outdoorsの戦闘的な意欲。
> 見習わなければですなあ。

恐れ入ります。
最近は「使ってナンボ」だと思って、色々と使っております。
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