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Zeiss沼99丁目

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更に色々となぞが解ける。そして更なる愛着が。






前回、ライツのフィルム・マガジンについて紹介させていただきました。その最後に実はコンタックス用にもフィルム・マガジンがあるようなことを記述しました。確かにツァイス・イコンのレンジファインダーであるコンタックスに関する辞典書でもあるハンス・ユルゲン・クッツ著「コンタックスのすべて」のアクセサリ章にはフィルム・カセットと称してイラストが掲載されていました。また、Contax Ⅰ の項にはこのフィルム・カセットを使う方法まで記載されており、フィルム側と巻取り側の両方にこのフィルム・カセットを用いることが紹介されていました。両方に使う理由は、当時のフィルムはまだ弱かったために傷や破れを回避するためにライカのように巻き戻すことをしない一方通行方式を取り入れることにした、とのことです。
更にネットでコンタックス用のフィルム・カセットについて検索していると、ピッタリな映像が見つかりました。フィルム・カセットに挿入するために先端部分を加工する補助ツール、テンプレートもあるようです。片方はライツにもあるような巻取り側スプールにかみこませるようにフィルムの片側を切り取り、もう片方はどうやらフィルム装填側に差し込むようにフィルム中央部分を残すような形状になっているように見えます。

ここまで簡単にまとめてみます。
①コンタックス用にも専用フィルム・カセットがある
②フィルム長巻から切り出したフィルムをつめる方式
③フィルム供給側と巻取り側の両方に使える

結論めいたことをさわりとしてこの時点でいってしまうと、ツァイス・イコンの着想から実物にする技術力は大変すばらしいのですが、やや手が込みすぎていているのかな、ということになろうかと。

以下、できるだけ資料に基づいて論は進めているものの、カメラやパーツなどの製作や販売の年号に関しては小生が見つけた資料によるもので、その確認作業はなされていないことをご理解ください。


【①コンタックス用にも専用フィルム・カセットがある】

コダックがパトローネを発表したのが1934年頃、ライツをはじめとしたカメラ会社が映画用フィルムの規格である135フィルムを小型カメラ用に使用し始めたのが1912年頃からですから、その間は映画用フィルム=長巻から適当な長さを切り出してカメラに装填していたことでしょう。カメラ自体を暗室に持ち込むのであれば、もしかしたら、パトローネやマガジン/カセットといった入れ物も必要とされず、カメラに直接セットしていたのかもしれません。とはいえ、前述の通り、フィルムのか弱さを思えば何らかの入れ物に入れたくなりそうですよね。更に小型カメラの特徴でもある、どこにでも持ち出せることを活かすとしたら、その撮影途中でカメラに装填していたフィルムが尽きて新しいフィルムを再装填したくなる要求も出てきたのでしょう。フィルムを感光させないで持ち運べる、カメラにセットできるという道具、つまり、マガジンやカセットという名の道具=アクセサリができたのでしょう。
加えて当時は統一規格化ということはさほど重要視されていなかったことでしょうから、メーカが独自に寸法類を決めていた可能性はあります。いわば、カメラ屋からの規格。それが前回ライツのフィルム・マガジンを使うことで知ったことです。おそらくその後、フィルム供給側であるコダックが広めようとした規格であるパトローネにカメラ側が合わせてゆくことになったのでしょう。すなわち、フィルム屋からの規格。ここにはユーザー側の視点(お客様の声 = VOC: Voice of Customer)もあったのでしょうが、そこまで調べるには小生の力は及びそうにありません。とはいえ前回エントリさせていただいた通り、ライツにおいては、バルナック型(パトローネ流通以前と推定)とM型(パトローネ流通以降と推定)でマガジンの寸法が異なっています。バルナックライカの後期には、パトローネの寸法に合うように三味線のバチの格好をした押さえが付いた底ブタも存在するようですから、あながち、小生の推論も大きく外れてはいないように思えます。
ということで、コンタックス。ツァイス・イコンもきっと先ずはカメラ屋規格でフィルム装填部位のあれこれを設計、実用部品=アクセサリを作ってきたことは想像に難くありません。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: 全体像]
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アクセサリ品番は 540/01 です。

今回色々と調べる中で、フィルム・カセットを5本手に入れました。結局すべて海外オークションサイトを利用して、アメリカやイギリス、ドイツ、オーストリアから取り寄せました。なぜ国内で見つからないのか。いや、正確には日本にもあることを確認できましたが、それは某コンタックス専門中古カメラ店の商品棚ではなく備品扱いの、いわば蔵、いや、倉庫に2つ非売品として存在していることが、小生が捜し求めてわずかに1例として存在したぐらいでした。ライツのフィルム・マガジンについては知る人は多く、中古カメラ店でも在庫している店もあるぐらいの流通量なのにも関わらず、コンタックスのフィルム・カセットは知らないという人がなぜ多いのか。日本にはコンタックスのフィルム・マガジンが輸入されなかったという話も聞いていますが、これだけの差があるのは、まだ解けていないなぞではあります。

図(1)は外観、ここには1例として上面に Zeiss Ikon のロゴとアクセサリ品番が刻印されているカセットを載せました。
図(2)はカセットを分解したところを示します。ライツのフィルム・マガジンと同様に3つの部品、外側シリンダーと内側シリンダー、フィルム軸(スプール)から構成されています。外シリンダーには、カメラ本体の位置決めに外周部に突起=位置合わせ用突起があり、カメラ本体の相当する部分に溝に合うようになっています。これについての詳細は後述します。内シリンダーと外シリンダーにはスリットがあり、両者が回転することでスリットが符合します。内シリンダーの内部上面と、外シリンダー内部下面にはフェルトが貼り付けてあり、フィルム軸の鍔(つば)が円滑に回転することを助けています。フィルム軸(スプール)、ここではアルミ鋳物製の画像を載せていますが、軸縦横部に2種類のスリットがあります。このフィルム軸については、後ほど詳細に紹介します。
図(3)にカセット上面を示します。内シリンダー上面には、シリンダーの回転をロックする爪=回転ロックとそのロックを解除するための突起=ロック解除突起、シリンダーの回転を助けるための突起=回転補助用突起があります。回転補助用突起は、ロック解除突起よりも背が低くなっており、内シリンダーを回転させるために掛かる力をロック解除突起と分散させるために備わっていると推測します。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: 開閉の仕組み]
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図(4)にフィルム・カセットのスリット開閉の仕組みを示します。内側シリンダー上部にある2つの突起の片方押し込むことで、軸をはさんだ反対側に配置されたロック(爪)が跳ね上がり、外側シリンダーに刻まれたロックが解除される仕組みになっています。跳ね上がり機構は、内シリンダー上面の板裏側にくの字に曲げられたバネ鋼が取り付けられ、シーソーのように片方が持ち上がっている状態になっています。内シリンダーは360度回転します。図(4)では時計回りの矢印になっていますが、回転方向は両方向、フリーに回ります。ライツのファイル・マガジンは約180度しか回りません。ライツのそれには外側シリンダー内部に突起があり、内側シリンダーに刻まれた溝にはまることで内外シリンダーの動きが制約される構造になっています。それに比べツァイス・イコンのそれでは内側シリンダー上部の蓋部に鍔(つば)があって、跳ね上がったロックとともに位置合わせ突起内側に刻んだ溝を通る構造となり、全周回るようなっています。内側シリンダーが抜ける位置の鍔がなく、その切り欠き部に本体との位置合わせ突起が合うと、内側シリンダーが抜けるようになっています。この全周回るのはフィルム巻取り側にも使えるようにするためで、これも後述します。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: バリエーション]
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図(5)に今回集めた5つのフィルム・カセットを載せます。集めて見たところ大まかに3種類に分類できそうです。
A型と名付けたのは、比較的初期のものと推測されます。「コンタックスのすべて」では Contax Ⅰ型と Ⅱ型のアクセサリ項に紹介されています。本体は真鍮製と推測されます(磁石につかない、アルミよりは重い)。このタイプだけが内シリンダー上面にメーカマークや品番の刻印がありませんでした。アルミ鋳物製のフィルム軸てっぺんに「Contax Made in Germany」と浮き彫りされているのと、円形プラスチックケースの蓋側に Zeiss Ikon のメーカマークがあることで、かろうじてツァイス・イコンの製品であることが推測されます。
B型と名付けたのは、次に古そうなものと推測します。赤く塗装されたアルミ製のケースで、「コンタックスのすべて」では Contax Ⅱa型以降のアクセサリとして紹介されています。フィルム・カセット本体は鉄製で、A型から比べると幾分ずっしりとした印象を持ちます。フィルム軸はプラスチック製で、シリンダーと軸の組合せが正しいとすると、プラスチックも使われていることからして、確かに戦後の製品と推測されます。
C型と名付けたのは、最も新しいものと推測します。便宜上ケースの種類で a と b を分類、Ca型が黒いプラスチック、Cb型がアルミ製としました。「コンタックスのすべて」には Contax Ⅱa以降のアクセサリとしてプラスチック(ベークライト)製と、アルミ製では無塗装(アルミ地金色)と赤、緑があると紹介されています。このエントリを作成するまでにネットオークションを見ていたところでは、アルミ製ケースは赤塗装しか見つけられませんでした。特に緑塗装、面白そうですね。コレクター心をくすぐります。なお、画像では Cb型にはフィルム軸が入っているように見えますが、実際には純正のフィルム軸ではなく、最近のパトローネを分解して取り出した軸でした。これも詳細は後述しますが、このC型全般的にフィルム軸が欠落したままで市場に出回っているものが多いようです。推測、フィルム軸だけでもカメラに使えるわけですから、このようなフィルム・カセットを使わなくてもいい現在では、フィルム軸だけで中古市場に流通しているのでしょう。だから、といっては言い過ぎかもしれませんが、C型=最も新しいタイプではフィルム軸が欠落している場合が多いのだと理解しています。
さて、これらのフィルム・カセットを詳細に、特にロック解除部分の構造を見てみると、大きく2つの種類があるようです。比較的古いと思われるタイプである A型 と B型 では、ロック解除突起だけが沈み込みますが(a方式)、比較的新しいタイプの C型 ではロック解除突起と回転補助用突起の両方が沈み込みます(b方式)。つまり、A型 と B型 の回転補助用突起は内シリンダー上蓋に固定されています。一方、C型 では両方の突起が回転ロック板側に取り付けられています。C型では内シリンダー最上面の蓋に当る部分はとても薄いアルミ板で、そこに突起を固定することが難しくなったためではなかろうかと推測します。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: フィルム軸の特徴]
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図(6)にフィルム軸の詳細を載せます。
上述の通り、フィルム・カセットに使えるのは鍔(つば)の径が小さいタイプになります。図(6)の左側にはアルミ鋳物製、右側にはプラスチック製を載せました。①に示す通り、コンタックス・レンジファインダー用として一般的に出回っているフィルム軸(スプール)と比べると鍔の部分が小さいことが分かっていただけると思います。
また②に示す通り、フィルム軸中央にはフィルムを固定するための2種類のスリットや爪が備わっています。2種類ある理由や用途は後述します。
そして③に示す通り、特にプラスチック製フィルム軸については、底部に突起部分がありません。突起のある右側(赤丸)は、いわゆる、パトローネ。市販のフィルムを分解するか、リローダブル・パトローネの軸の部分だけ持ってきたのか....、つまりパトローネのフィルム軸の鍔は径が小さく、このフィルム・カセットには使用できるということにもなるんですけれどね。底部の突起に話を戻しましょう。図(2)のフィルム・マガジンの構成部品を見ていただけるといいのですが、この突起が外シリンダー底部の穴に入りにくいのです。入らないことはないのですが、渋くて組み立てる時に時間が掛かります、ちょっとのことなのですけどね。この突起をナイフで削り取ってしまえばいいのですが、今度は軸の中央部分にしかフィルムを固定するするところがないので、フィルム供給側にしか使用できません。ま、撮影後に巻き取ればいいのですけれどね。
このような仕組みが分かっていなかった頃、コンタックス用フィルム軸を予備で揃えていたらいくつかのパターンがあることには気づいていました。この中にも鍔の径が小さく、かつ、軸中央部に2種類のスリットが備わったフィルム軸があることが、今更ながら分かりました。フィルム・カセットを追い求めないと分からなかったことではありますが。これらいくつかは手に入れたコンタックス/キエフ のカメラ本体に入っていたり、市中の中古カメラ店で求めたりしたものですので、上述した通り、フィルム・カセット用としていたフィルム軸だけで流通していることを示している傍証にもなりそうです。とはいえ、実は純正アクセサリにはフィルム軸(PN: 540/5)というのもあるので、わざわざフィルム・カセットからフィルム軸だけを取り出して中古市場に流通させていた、とだけはいえないかもしれません。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: ケースの工夫]
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図(7)に菱形断面ケースに施された工夫を紹介します。この菱形断面のケースは、本体との位置合わせ用突起が上手く収まるようにという配慮の結果の形状となっているようです。位置合わせ突起が菱形の角度の狭い方に上手く収まり、角度の広い方はフィルム・カセットの外シリンダーに沿うようになっていて、ガタつかず、コンパクトに持ち運べます。
加えて、菱形タイプの上蓋にはスリットや窓が切られていて、ボディ側に記された「EXP.」に合うようになっています。菱形ですので、蓋は2方向にしか閉めることができません。撮影前は EXP. が隠れる方向に蓋を閉めて、撮影が終わったら EXP. が見えるように閉める。ちょっとした工夫が盛り込まれているのですね。


【②フィルム長巻から切り出したフィルムをつめる方式】

ここまで見てきたように、このフィルム・カセットは、いわゆる、長巻からフィルムを詰めることを前提に作られています。そして、フィルム供給側とフィルム巻取り側に使うことができるように作られています。それでは、フィルム・カセットにどのようにフィルムを詰めて、カメラ本体にセットするのかを見てみたいと思います。
先ずはフィルム巻取り側、それはこれまで出てきたライツのフィルム・マガジンやニコンのフィルム・マガジン、最近のリローダブル・パトローネと同様にツァイス・イコン製でもフィルム軸中央部のスリットにフィルム側の中央をベロ状に整形して挿入します。
一方、フィルム巻取り側は、フィルム軸凸側にフィルムが残るように片方を切り揃えるのが一般的です。ライツには、フィルム加工用のテンプレートがありますがツァイス・イコンにも同様の、それも、フィルム供給側のベロを加工する部分も備わったテンプレートがあります。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: フィルム加工テンプレート]
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図(8)がフィルムを加工するための純正テンプレートになります。また、切り揃えたフィルムとフィルム軸との関係もイメージとして載せました。文字で書いていてもなかなか伝わりにくいのですが、画像を見ると納得いただけるのではないかと。
なお、ツァイス・イコンのフィルム軸中央部のスリットには、ライツやニコン等のフィルム軸中央部スリットにあるような抜け止め防止の爪はありません。単にスリットが切られているだけです。というのも、撮影後のフィルムをフィルム供給側に巻き取らず巻取り側に収納するため、フィルム供給側のフィルム軸からフィルムが抜けてくれなければならないからです。ライツやニコン等では、フィルムを巻き戻さなければならない、逆にいえば、巻取り側に抜け出しては困りますから、抜け止めの爪が備わっているということになります。
図(8)でご覧いただける通り、フィルム供給側のベロはかなりの長さになりますよね。実際使ってみると、確かにそれこそ冗長で....、ものの10mmもあれば十分で、長いと大切なフィルムに一杯の写真撮影ができない部分を作ってしまいます。とはいえ、フィルムが巻き取られて残りわずかになっていてもフィルムのテンションが維持されて、つまり、ギリギリまで撮影ができるように抜け出さないようにするためには、この程度の長さのベロが必要と判断していたと推測します。

ちなみに、暗室でフィルムをフィルム・カセット(マガジン)に詰める場合、長巻から適当な長さ切り出すと書きました。一般的な135フィルムのフォーマットの長さ方向は36mm、コマ間2mmとすると1コマは約38mmになりますよね。大人が両手をいっぱいに広げた長さ、つまり、ひとひろは約1.5m。両端の巻取りに要する代を除いて、撮影に関する感光に供せられる長さは高々1400mm。つまり1コマ38mmで割ると.....、おおよそ36枚になるという。最初、36枚撮りって、3ダースから来たのかと思った時期があったのですね。でも、1ダース=12枚、2ダース=24枚という選択肢があったのかとフィルムの販売歴史を見てみると、それらはなかったようで、36枚より少ない設定は、20枚や10枚というキリ数が一般的だったようですね。つまりダース単位で決められてはいないのかなと、それはそれでその時は、それ以上深くは考えませんでした。こう長巻とカメラへのフィルム装填方法について色々と調べて、考えて見ると、当時は「せめてフィルムひとひろが入れられるカメラを作って、カウンターは36枚にするか」としたのであろうという説がもっともらしそうです。ネットで調べて見ると、多くは12進数やネガフォルダーから来ているのではないかということで、小生と同じ「ひとひろ説」は1名だけでした。みなさんは、いかが思われますか。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: ニコン製フィルム・マガジンとの比較]
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話はちょっとだけ脱線します。図(9)に、ニコンのフィルム・マガジンとの比較を載せました。
ツァイス・イコンのフィルム・カセットを色々と見ていたら、小生が手に入れたフィルムローダーに付属していた NiKON と書かれたアダプターの所以を調べている時に知ることになったニコン社製のフィルム・マガジンに似ているなと気づいたのです。ツァイス・イコンの方のフィルム・カセットを探していたところ、とある中古カメラ店にニコン製フィルム・マガジンを見つけたので、試しにひとつ求めて比べて見ることにしました。それが図(9)になります。
結果からいうと、ニコン製のフィルム・マガジンはコンタックスには使用できません。
ツァイス・イコン製とニコン製、大変よく似ています。部品構成やその大きさ。ぱっと見た目違うのはロック解除突起と回転補助用突起の位置関係が逆になっています。まあ、これは微小差と思って、ニコン製フィルム・マガジンをコンタックスに装填してみます。上手いこと位置合わせ突起もカメラ本体の溝に合って、それらしく収まるのですが....、裏蓋が閉まりません。取り出してニコン製フィルム・マガジンの底を見てよく分かりました。ISO表示機能があるため、というか、そこの部分の構造が異なっていて、その高さ分だけコンタックスのカメラ内部では浮いてしまうようです。ほんのわずかな寸法のようですが、なりません。ネットオークションサイトではニコン製にもかかわらず、コンタックスやキエフに使用できると記載している出展をいくつか見かけました。ここに述べた通り、ニコン製またはニコン用として製作されたフィルム・マガジンは、少なくとも、Contax Ⅱ には使えません、要注意です。
とはいえ、ニコン製フィルム・マガジンと似ていて得したことがひとつあります。それは、ツァイス・イコン製フィルム・カセットにフィルムを詰める時にこのフィルムローダーが使える、つまり、暗室作業しなくてもフィルムがフィルム・カセットに装填できる、のです。ライツ製フィルム・マガジンの時のように、2度手間をしなくて済むのです。これは大きなアドバンテージです。


さて、ここまではツァイス・イコン製フィルム・カセット単品を詳細に見てきました。ここからはカメラとともに、使用方法や遣い勝手などを見てみたいと思います。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: カメラ本体への装着]
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図(10)にフィルム・カセットのカメラ本体への装着方法を示します。
図(1)から(3)に紹介したフィルム・カセットの画像にある通り、外側シリンダー上部には鍔に位置合わせ突起があります。これがカメラ本体の溝にはまるようになっています。ライカではフィルム・マガジンの外側シリンダー胴体の膨らんだ部分、ロック解除レバーがある部分がなんとなく収まりがいいような位置に導かれてカメラ本体に収まりますが、コンタックスではしっかりと溝が作られていています。カメラ本体内部がこのような構造になっているとは気づきませんでしたね、カメラ本体の軽量化のための肉取りかと思っていましたよ、フィルム・カセットを入れてみるまで。この溝はカメラの両側、すなわち、フィルム供給側とフィルム巻取り側に加工されています。
ロック解除突起と回転補助用突起は、裏蓋の固定ノブ裏側に当ります。この二つの突起が当るあたりに切れ込みがあり、ちょうどそこにはまります。という目で見てみると、確かにふたつ突起が当るような場所に当り傷があります。フィルム供給側により強くあるカメラ個体が多いように、小生宅にあるカメラたちの傾向のようです。つまり、フィルム巻取り側の傷は少なく、フィルム巻取り側にフィルム・カセットを使用していた人はあまりいないのではなかろうかと推測されます。
ちなみに Contax Ⅱ コピーモデルの Kiev Ⅱ でも同じ形状になっています。当たり前といえば、当たり前ですが。
ではフィルム巻取り軸がカメラ本体に備わっている Kiev Ⅳam ではどうなっているでしょう、画像をご覧ください。なんと、この溝そのまま生き残っているのですね。フィルム巻取り軸が既設で、フィルム巻取り側にはフィルム・カセットを入れない、入れられないにもかかわらず、溝は残っているのです。本体加工の図面を変えたくなかったというのが、最も考えやすい理由です。加工工数削減より、周辺の部品の図面変更や部品の流用性の阻害など、フィルム・カセットを使わないからといって溝をなくす設計変更は、この場合デメリットの方が大きそうです。まさかこの溝を加工しないと左右のバランスが崩れるとか....、キエフ側ではフィルム供給側の溝の意味が分かっていなかったとか....、そんなことはないですよね。もちろんといってはなんですが、キエフ・レンジファインダーカメラ用にもフィルム・カセットは作られていたようで、ネットオークションサイトにはキエフ名のフィルム・カセットが出展されているのを見かけます。

フィルム・カセットに巻き取られたフィルム、フィルム巻取り側にセットされたフィルム・カセット、フィルムはどのように移送されてゆくのでしょうか。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: カメラ内フィルムの動き]
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図(11)にフィルム供給側とフィルム巻取り側にそれぞれフィルム・カセットを装着した場合のフィルムの動きを示します。実際には裏蓋はしまっているわけですから、イメージということにはなりますが。
順番に見てゆきましょう。
先ずは①、フィルムをセットしたところになります。この時点では、もちろんフィルム・カセットは閉まった状態になっています。セットの仕方としては、閉まったフィルム・カセットのスリットから出ているフィルムのリーダー部分をスリットが閉まった状態のままで、フィルム巻取り側に届く程度に適当に引き出します。ここでスリットを無理やり開けないように、って、開けませんよね。感光前のフィルムが入っているわけですから....
図示はしていませんが、フィルム巻取り側は組み立てた状態でも良いですし、3つの部品に分解した状態でも、フィルム軸の巻取り側の爪やスリットに図(8)に図示したように差し込みます。フィルム・カセットをフィルム巻取り側にセットして、カメラ本体の巻取り軸スプロケットがパーフォレーションの穴に合って、巻取りができるな、というところまで巻きます。忘れてはいけないのが、フィルム巻取り側のフィルム・カセットは裏蓋を閉める時点では、スリット閉にすることです。裏蓋を閉める行為により、カメラ本体内部ではスリット開にするためです。フィルム軸に結ばれたフィルムのリーダー部分が見えないところでフィルム・カセットのスリットを閉めるわけですから、ちょっと不安です。実際、慣れないと、いや、何度もやっていても、裏蓋を閉めてからフィルム巻取り側のフィルム軸からフィルムのリーダー部分が抜けてしまうことが発生してしまうので、慎重に、慎重に作業を進めることになります。
②以降、実際はカメラ裏蓋が閉まっている内部で起きていることです。ここでは裏蓋が閉まっている時の状態であるフィルム・カセットのスリットが開いている状況を作り出しています。撮影が進むにつれて、フィルムは巻取り側のフィルム・カセットに巻き取られてゆきます。そうするうちに用意したフィルムの終端となります。
③にフィルムがフィルム供給側フィルム・カセットから抜け出してくる様子を示します。前述の通りフィルム軸中央スリットには抜け止め機構はありませんので、フィルム巻取りに従いスルスルとフィルムは抜け出してきます。フィルム巻取りの部に微妙ではありますが手ごたえがあります。フィルムカウンターは、正常に動いていることが望ましいです。そうしないと、無限フィルムになっているかのごとく、シャッターを押すことができますが、実際には画像が得られていない状況に陥ってしまいます....供給側フィルム軸に挿入するためのベロを加工する際の手際にもよりますが、③に示した位置での画像記録はなかなか難しいかと、ベロ加工の段階で既に露光していることでしょうから。
そして、かすかな手ごたえを感じ、フィルムカウンターが当初の枚数をいくつか越えると、フィルムはフィルム巻取り側フィルム・カセットの内部に取り込まれます。裏蓋を開ける操作で両方のフィルム・カセットのスリットは閉まります。そして実際には裏蓋を開けた時には、スリットの閉まった状態で、フィルム巻取り側にフィルムが移送されたフィルム・カセットが取り出せます。
現像作業はフィルム・カセットからベロをフィルムピッカーでつまみ出すか、あ、もちろんその作業はフィルム・カセットのスリットが閉まった状態で行いますが、つまみ出せなければ、チェンジバックの中でフィルム・カセットを分解してフィルムを現像用リールに移し変えます。

そういえば、コンタックス・レンジファインダーカメラは裏蓋が外れるため、ライカ、特にバルナックライカに比べてフィルム装填がやりやすいといわれていますよね。とはいえ、ここで見てきたように、こんな凝った機構を実現するためには裏蓋が完全に外れないとできないという、必然性も合ったのではないでしょうか。フィルム供給側と巻取り側にフィルム・カセットの両方にきっちりとセットするには、落ち着いて、平らな場所にカメラを横たえて、蓋を安全な場所に置いて、注意深く丁寧に作業を進めないとなりません。か弱いフィルムを巻取りのストレスをかけずに使えるのですよ、最低3つフィルム・カセットを用意すると順繰りに使い回しができていいでしょう....、って声が聞こえて気はしますが。

それでは最後にまとめ的に、フィルム・カセットの動きをポンチ絵で示しつつ、ライカのフィルム・マガジンと比べて見ましょう。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセット: フィルム・カセットと巻取り方法の関係]
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図(12)にフィルム・カセットとフィルム、カメラ本体内部を模式的に示します。いずれも図はカメラの底面を見ている状態となります。
先ず①でコンタックスの事例をここまで見てきた内容で整理してみましょう。フィルム供給側フィルム・カセットにフィルムを詰めます。その時点(カメラの外、Body: Open)ではフィルム・カセット本体は閉まっていることになります(Cassette: Close)。フィルム・カセットをカメラにセット、裏蓋を閉めることで(Body: Close)、ロック解除突起と、図示はしていませんが回転補助用突起により内内シリンダーが回されてスリットが開きます(Cassette: Open)。これはフィルム供給側もフィルム巻取り側も同じです。オレンジ色の円弧矢印は、フィルム・カセットのスリットを開けるための内シリンダー回転方向、つまり、裏蓋を閉める時の締め付けノブ回転方向です。カメラ正面を手前にカメラの底から見ると2つのノブは向かい合うように回すことになります、つまり、フィルム供給側は時計回りに、フィルム巻取り側は反時計回りに回します。この方向に回すことで、フィルム・カセットそれぞれに巻かれたフィルムに邪魔されずスリットが開けられたり、スリットが閉められたりします。また、供給側にフィルムが残っていても、巻取り側にフィルム・カセットがあることから、裏蓋を開けても撮影済みでフィルム巻取り側フィルム・カセットに収納されている部分は感光せず、取り出すことができます。つまり、フィルムを途中で取り出すことができる、ということになります。両側のフィルム・カセット間フィルムは感光しますが、撮影途中でもフィルムを取り出すことができる、ということには違いはありません。
さて、フィルムはフィルム巻取り側フィルム・カセットのフィルム軸にこの図だと時計回り、所謂順方向に巻き取られます。ここで注意は、この図から見るとカメラ側のフィルム巻取りノブ、あのシャッタースピード設定と兼ねたノブは反時計回りに回します。ということは逆転ギアが1つ入っている、ということですね。フィルムが巻き取られる回転とカメラ本体でフィルムを巻き上げる方向が逆なのは、慣れないと混乱します。フィルム巻き上げの部が回らず、もうチャージされたのかと思ってシャッターボタンを押してもシャッターが切れない....、おかしいと思ったら、フィルムノブをこの図で見て反時計回し、フィルムが巻き取られる方向と同じ方向に回して、いや、ロックして回せないので、もうチャージできたと勘違いしてしまうのですね。コンタックスではこのようになっていました。
さて、ライカの場合を同様にポンチ絵で示してみましょう。②をご覧ください。フィルム・マガジンはフィルム供給側にしか使えません。そして、フィルム巻取りは所謂逆方向である反時計回り、フィルム巻き上げはこの図で見ると反時計回り、ここは一致しています。裏蓋を閉めるノブを回す方向はコンタックスと同じです。フィルムを逆方向に巻くことで、フィルムの巻き癖は取り易く、フィルム・レールは順方向であるコンタックスより多少短くしているようです。しかしながら、フィルムは原則フィルム供給側に巻き戻すことになり、フィルムはフィルム・レールと図示はしていませんが、圧板の間を2度通過することになります。
ここでお遊びとして、ライカでもコンタックスのようなフィルム・カセットで、フィルム巻取り側にも使えないかを考えて見ました。それを③に示します。その結果、できそうではありますが、フィルム・カセットの中でフィルム感光剤面が外側になるようにフィルムが巻き取られることになり、フィルム・カセット内面との干渉による傷の問題などで現実的ではありません。
蛇足ではありますが、この図を見ると順方向で巻き上げるコンタックスでは、ライカと比べるとフィルムの巻き癖を取るためでしょうか、フィルム・レールが長く作られており、やや幅広のカメラになっています。つまり大型になってしまっているわけですが、その分、コンタックスはレンジ・ファインダーの基線長を長く稼ぐことができることもできた、というのは小生の考えすぎでしょうか。


[ツァイス・イコン製コンタックス用フィルム・カセットと Contax Ⅱ]
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ツァイス・イコン製のフィルム・カセットとその使用方法いかがだったでしょうか。これでフィルム・ワンウェイでの撮影が可能になったわけです。あ、その前にこのフィルム・マガジンを使うとアンダーパーフォレーションが起きにくいことは当然の結末として報告しなければなりません。起こりにくいと少々言葉を濁したのは、このフィルム・カセットを使って何回か撮影してみたのですが、明らかなパーフォレーションへの被りはないのですが、かなりギリギリなのですね、最近のカメラのようにフィルム幅ど真ん中に像が来るということはなく。まあ、そこいらへんは、年代モノのカメラなので色々とあるのでしょうね、色々とね。
というわけで、使ってみての雑感としては、色々と考えられた道具であることがよく、本当に良く分かりました。しかしというか、但しというか....、どうも使い勝手からいって、そこまでしなくても良かったかなと思うところもありでして....


最後になりましたが、今回も随分と長々としたエントリになってしまいました。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
一部に想像や妄想なんかも織り交ぜている部分もあります。決して貶めるためではなく、ツァイス・イコンの技術力高さは抜きん出ていることを小生自らが気づき、それを知ってもらいたい、そして更にコンタックスに深い愛着を持った、という気持ちで書かせていただきましたことを、是非ご理解いただきたく。よろしくお願い申し上げます。


[Contax Ⅱ と Leica DⅢ、フィルム・カセット と フィルム・マガジン]
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テーマ : ★カメラ&レンズ・機材
ジャンル : 写真

tag : Camera.Contax2 道具.カメラ小物

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